Looper/ルーパー ― 2012年10月08日
見てる間中、ずっと、この脚本はどっちの方向に結末を持っていく気なんだろう、といぶかしんでた。
Looper (邦題: Looper/ルーパー)
見ごたえあります。流し見する映画ではないです。ノンストップアクションの類ではなくて、あんまりアドレナリンでたり血湧き肉踊ったりしません。銃撃シーンはやたらあります。やたらと銃持ってる人が多い世界です。でも、西部劇のように銃一つで渡っていけるような世の中でもありません。むしろ高度に監視・管理された世界です。
と、いうわけで、おすすめ。見終わってから、一緒に見た人とあれこれ解釈を話したい人向け。そういう意味では「インセプション」みたいな映画。「インセプション」からアクションシーンを減らしてコンパクトにまとめた、と考えると、おお、それって結構理想的なのでは。アクション映画を見てスカッとしたい人は別の映画にしよう。
以下、ネタバレが少し混じります。あまりおおっぴらにはしないから、見る前に読んでも大丈夫だとは思うけど、見る前には何も知りたくない人は、ここでひとまずさようなら。
もういいかい。
もういいね。
世界設定の説明に最初の30分かかった。そこもちゃんと面白かったけれど、本題はなかなか始まらない。
映画の予告編を見て、ジョセフ・ゴードン・レビットが未来から来た自分=ブルース・ウィリスを殺しそこねる話だとは知ってました。でも、レビット君もその一人であるルーパーたちが、必ずいつか未来から来た自分を殺すことになる仕事に就いていて、当人たちもそれを分かっていてやってる、という設定には驚いた。
殺されそこねたルーパーには悲惨な末路が。まず腕に、どこそこへ来い、というメッセージが現れる。あな恐ろしや。が、これ見ると、この映画のタイムトラベルの因果律って、とても適当だと思う。それまで経験しなかったはずのことが突然経験したことに変わった、のだけど、変わった後も、さっきまではその経験はしていなかったことを覚えていて、新たな経験が突然増えたことに驚いている、というのは納得いかん。
タイムトラベルものなのだけど、あんまり因果関係とかを真面目に詰めようとはしてない。都合が悪くなりそうなところは、「俺はタイムトラベルの御託は聞きたくねぇんだっ!」と怒鳴ってそっちに話が進まないようにしてるし。まぁそういう世界設定だと納得するしかない。
殺されそこねたブルース・ウィリスの腕にもメッセージが現れる。"BEAT..." 残りは袖に隠れて見えないけど、"Be at ..." (... に来い)の意味だと当然思う。いや、ある意味その通りだったけど、違った。何言ってるか分からない?まぁ映画みなさい。
世界設定の冒頭に出てきたTK=テレキネシス。世界人口の10%程度がこの能力を持っているのが発見されたけれど、みんなコインを手のひらの上で踊らせるぐらいのことしかできない。そのあと、この話はずっと放置されて、また出てくるのは1.5時間後ぐらいか。ははーん、そういうことか、と楽しくなる。
ジョセフ・ゴードン・レビットが、目に隈取をして出てくるシーンがあります。これはレビット君=ジョーが老けるとブルース・ウィリス=老けたジョーになる、という、無理のあるキャスティングを押し通すためのメーキャップなんだろうか。隈取をすると、レビット君はブルースではなくて、えーと、あれ、あれに似てます。あー、だめだ、思い出せない。トラボルタに似てる、と思ったような気もする。
すごい子役が出てきます。10歳という設定のように聞こえたが、6歳ぐらいにしか見えない。英語の聞き違いかな?それでいて演技してる。それともCGか?「8かける3は32」のくだりの演技とか素晴らしい。 imdb によると、5-8歳の間となっていて、やっぱり10歳ではない。
この映画の始まりは2044年になっていて、今から32年後なわけだけれど、あまり世の中変わっていない。ちょこちょこガジェットが出てくるだけ。昔の映画だと、30年も先の未来は全く違う世界になっていたけれど、それから30年実際に経って、変わらないところは変わらないのをみんな見てしまったからねぇ。
タイムマシン。古工場の片隅にあるボイラーのような見栄えの冴えないマシン。こんなに地味なタイムマシンも珍しい。目標日時の表示すら出てきません。
レインメーカー。未来の世界の支配者。彼が何者でどんな手段で世界を乗っ取り、どんな統治をしているのか、あまり直接は説明されません。なぜレインメーカーという名前なのかも。が、見てるとだんだん分かってきます。たぶん彼はあちこちで「血の雨を降らせ」て回ったのだろうと。
30年前のレインメーカーを殺しに来るジョー。だが、手持ちの手がかりだけでは誰が30年前のレインメーカーなのか、特定しきれない。3つの該当する住所に住む子供を次々殺して回る。ヘロデ王の嬰児殺し。あっ、ということは…これは大きなネタバレかもしれん。後で書きます。
レインメーカーはなぜすべてのループを閉じようとしたのか?自分の母親を殺した犯人にだけ未来の世界で復讐すれば済みそうなものなのに。
結末はそのシーンの30秒前ぐらいに気がついた。彼は世界を救ったのか?それとも親子を救っただけなのか。
「インセプション」のコマのような小道具は出てこないけれど、観客の心の中に大きな疑問符を植えつけて終わる、無音のラストシーン。
で、大きなネタバレ、いきます。本当かどうかは保証のかぎりでないけど。
ヘロデ王が殺そうとしたのは幼子のキリスト。ということは、ジョーに母親を救われたレインメーカーは、新しい世界の救世主になる。
レインメーカー=キリストとすれば、レインメーカーの母親はマリア、そしてジョーはジョセフ=ヨセフ。おお、なんだか辻褄があうぞ。
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