Chef (シェフ 三ツ星フードトラック始めました)2014年10月12日

楽しくておいしそうでご機嫌なコメディ。テンションの上がり方では、ここ数年見た映画の中で一番かも。


 Chef (邦題未定:シェフ、ただし下記参照)
 [2015年2月7日追記:下記通りの邦題で2月28日から日本公開だそうな。]


カールはロスのレストランの雇われシェフ。腕には自信があるし、部下たち=厨房仲間の信頼も厚い。でも有名批評家に酷評されて、大勢の客の前で批評家を罵倒してしまい、その様子が Youtube で広まって、くびになる。で、心機一転、昔住んでたマイアミに戻り、屋台バスを仕入れて自分の店を開店。行く先々の街で営業しながらロスまでバスを運ぶ、大陸横断旅行を始める。


くびになったりするものの、カールはリア充。元妻はやり手の実業家で、離婚してからも仲は悪くない。元妻が引き取った10歳の息子にも慕われている。その一方で、レストランの接客係兼ソムリエの女性とも付き合っている。


アイアンマンの監督兼脇役でも出ているジョン・ファヴローが、この映画では監督兼主役。 同じくアイアンマンに出ていたスカーレット・ヨハンソンもカールの恋人=接客係役で出演。


と、思っていたら、アイアンマン=ロバート・ダウニー・ジュニアも出てきたので驚いた。カールの元妻の元夫。


ジョン・ファヴローと仲間たち、で作った映画らしい。


腕の立つ料理人が主人公の映画なので、次々とおいしそうな料理が出てくる。完成品だけじゃなくて、鮮やかな手つきでねぎをみじん切りにするところや、鉄板の上で慎重に焼き加減を見ながら作っているところも。その辺、「料理の鉄人」っぽくもある。あ、ここにも鉄人=アイアンマンつながりが。


Twitter、Youtube, Vine, Facebook などSNSがモチーフとして出てくる。カールの息子は10歳にして色んなSNSを使いこなしているが、カールはTwitterが何かも知らない。返信ツイートはあて先にしか見えないと思い込んで有名批評家のコメントに悪態を返し、話題になってしまう。


Sherlock とか、フライト・ゲームでもそうだけど、登場人物がTweetした内容が画面上にオーバーレイされて見えるようになってる。おまけに、Tweetを書き込んだ際に聞こえる口笛のような音が頻繁に聞こえる。Twitterとタイアップしているとしか思えない。


カールはレストランのフルコースが作れる本格シェフなのだけど、屋台バスで売るのはキューバ式ホットサンド。スペイン語でクバーナ。元妻の父親がキューバ系で、今もレストランでキューバ音楽を演奏している。


クバーナいいねクバーナ。飛行機のエコノミークラスの、3列の真ん中席で、リズム取り始めたのは私です。ごめんなさい。そのくらいご機嫌。


一つネタバレ、コーンスターチ (^_^)。アメリカ南部を走る屋台バスの中は蒸し暑い。手伝いにかけつけてくれた、厨房仲間のマーティンは、バスのハンドルを握りつつ、コーンスターチを自分のパンツの中に流し込む。それを見ていたカールの息子はびっくりして父ちゃんに言いつけるけど、カールは「お、そりゃいいね」と言って自分もコーンスターチを一掴み、パンツの中に振りまく。「お前もやってみるか。ベビーパウダーみたいなもんだよ。」そうかぁ、そうなのかぁ。来年の夏は片栗粉でも撒いてみるかな。


めっちゃ楽しくていい映画だと思うのだけど、imdbのユーザーレビューでは、酷評が目立つ。平均評価は7.3 (10点中。僕は6点台なら割と安心して見に行くことにしてる)、メタスコアも68点とかなりいいんだけど、具体的なユーザーコメントを見に行くと、星一つとかめちゃくちゃけなされている。


あまりにも先が読める、本格シェフが屋台バスとかありえない、前妻の前夫がおんぼろとはいえ屋台バスをくれるなんてありえない、あんなに離婚した父親になついている息子なんて(以下略)、Sous Chef に昇進したばかりの厨房仲間が、その仕事をほっぽらかして屋台バスに駆けつけるとか(以下略)、ジョン・ファヴローのお友達の友情出演ばかり、等々。


リアリティがないのを怒っている人が多いみたいだけど、映画ぐらい、おとぎ話でいいじゃん。別れた妻と、友達でもいいじゃない。よりを戻して再婚してもいいじゃない。


ちなみに、Rotten Tomatoesでのスコアは88%で、すごくいい。


今年の東京国際映画祭でも上映するそうです。10/26(日) 10:30から六本木で。


 シェフ 三ツ星フードトラック始めました


なんじゃその邦題は、と思うけど :P お時間と、リアリティがないのを許すかたはぜひ。


The Salvation (悪党に粛清を)2014年10月13日

渋い、絵になる、美しい。


 The Salvation (邦題: 悪党に粛清を―2015年3月8日追記)


お話は、西部劇の王道を行く復讐譚。ちょっと珍しいのは、主人公が北欧系の移民なことか。


7年ぶりに再会した妻と息子を殺されて、すぐさまその仇を撃ち殺したものの、こいつがこの辺りを支配する悪党の弟か何かだったせいで、この悪党に狙われることに。


ストーリーは極めて予想通り。ドイツ語吹き替えで見たので、分からないセリフもあったのだけど、何も困らないくらい先行きの想像がつく。


それでいて、満足感が高いです。


カッコつけているのとは違う。自然体なのに、すでにキマっている。


なんだか、西部劇をこんなに高解像度で見たことはあまりない気がする。西部の荒野は吹き渡る砂で視界をさえぎられているのだけど、にも関わらず景色が奇妙にくっきりとしている。


主役の二人はどちらも寡黙です。ほとんどセリフがない。ヒロインのエヴァ・グリーンなんてほとんど目ぢからだけで演技。目の大きいエヴァならではの技。


マッツ・ミケルセンとエヴァ・グリーンと言えば、007 カジノ・ロワイヤル(デビッド・ニーブンの方じゃなくて、ダニエル・クレイグの方だ)で共演していた二人。マッツはあっちでは悪役だったが、今回は主人公。エヴァはヒロイン=悪党の情婦で出演。


と思ったら、ダニエル・クレイグも出て…来たりはしない。昨日記事にした シェフ といい、これといい、なんかそういうパターン流行ってるのかな。


監督のお友達でいろんな映画撮るってのは珍しくない。クリストファー・ノーラン監督のインセプションに出ていたジョセフ・ゴードン・レヴィットやマリオン・コティヤールが、同じ監督のダークナイト・ライジングにも出てくる、とか。


ただ、こういう場合、脇役は何度も同じ顔ぶれで出てくるけど、主役は入れ替わるものらしい。


この映画の監督は、カジノ・ロワイヤルとは違う人なので、どういうわけでマッツとエヴァの共演がまた起きたのかは、よく分からない。


以下、ネタバレ。










これは、どこかの英語かドイツ語のレビューで読んだ話なのだけど、どこのサイトだったか分からない。


この The Salvation =「救済」という題名は、キリストによる救済を示唆していて、村人に裏切られて悪党につかまり、木の柱につるされる主人公は、弟子に裏切られて十字架にかけられたキリストのメタファー。


村の人々は、保安官を含めて悪党の支配に対して無力。主人公が村に姿を現すと、わらわらと現れて取り押さえ、悪党に突き出す。


その後、弟に救出された半死半生の主人公は、荒れ野に隠されて追っ手の目を逃れ、生き延び、やがて反撃を始める。これはキリストの復活を表す。


そういうわけで、エヴァが演じる悪党の情婦の名は、Madelaine、つまり、マグダラのマリア。


 「マグダラのマリアは、イエスの死と復活を見届ける証人」 ( Wikipedia)