エンジェル・メイカー ― 2015年10月25日
宮崎アニメの(具体的には「ラピュタ」の)雰囲気をたたえた、冒険心あふれる物語。ただしR15。
エンジェル・メイカー ニック・ハーカウェイ ハヤカワポケットミステリ
最初、帯に「本」をめぐる物語、みたいに書いてあるので、図書館に眠る古書に関する、「薔薇の名前」とか「風の影」とかみたいな、黴臭い話かな、と思っていたのだけど、まるで違った。
いや、最初のほうは結構辛気臭い。主人公は地道に生きる時計職人で、よそから持ち込まれた謎の「本」に振り回される。でも、この「本」は実は全然本じゃない。時代の水準を超えた超絶技巧で作られた、精密機械だ。
これにマッドサイエンティストと凄腕女スパイと残忍な君主と伝説のギャングとイギリス政府の冷血な官僚と超有能な弁護士と男勝りの魅力的な幼馴染と覆面技能者集団と誇り高い葬儀社ギルドがからむ。
すごく映画化してほしい。アニメでも実写でもいいから。絶対無理だけど。
以下、ネタバレを含む。
残忍な君主、の突き抜けたエグさがいい。自分の宮廷の壁の裏でやってることもひどいが、イギリスに戻った主人公を誘拐監禁するあたりは、オールド・ボーイの私設監獄を思い出す。具体的な残虐行為の描写は少ない。むしろさらっと一、二行でとんでもないことが書いてある。
超有能な弁護士、の突き抜けた万能感もいい。映画化するなら、マーク・”マイクロフト”・ゲイティスにやってほしい。
凄腕女スパイ、の、美貌を押し隠して男性に化けているという設定もいい。しかも、小説の冒頭では、湯婆婆か、ドーラ婆さんか、と言う姿で出てくる。
主人公、地道に生きる時計職人、の終章での化けっぷりがいい。伝説のギャング、だった父ちゃんの魂が憑依したかのようなスイッチの入り方。
最初から最後まで、物語や人物の設定に、どこかで見たようなパターンがちりばめられている。より極端になって、でも洗練された形で。ストーリーはそれに比べるとおとなしい。でも、伏線の回収っぷりはすごい。
この作者の次の本が出たら、買う。きっとかう。たぶん。
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