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タランティーノっぽいキングズマン2015年04月20日

マーズ・アタックを思い出した。よく似たシーンがあるんだよね。


 Kingsman: The Secret Service (邦題:キングスマン)


キック・アスの製作者達が作ったスパイ映画。とっても面白かったけれど、キック・アスと同じく、お行儀の悪い映画です。決して子供連れで行ってはいけません。


スパイ映画のコメディといえば、オースティン・パワーズという、行儀の悪さでは誰にも負けない映画もあるんだけど、あれとこれでは行儀の悪さの種類が違う。こっちの行儀悪さは、キック・アスで、ヒットガールが薙刀で次々と悪漢を倒すシーンがありますが、あの感じです。ただし、ここで「悪漢を倒す」というと、お行儀の悪さが伝わらない。言い方を変えると、あれは、「10歳ちょっとの少女が嬉々として小悪党を刺し殺し続ける」というシーンなわけで、その身も蓋もなさを10倍増しにしたと思えばだいたいあってる。


スパイ映画の伝統にのっとり、この映画のスパイ組織もイギリスにある。イギリスらしさを豪華なキャストが盛り上げてます。主役のベテランスパイは、英国王のスピーチで国王だったコリン・ファース。また、オースティンの父ちゃん=これも伝説のスパイ、ナイジェル・パワーズ役のマイケル・ケインが、この映画ではスパイマスター、つまりスパイ組織のトップをやってます。


このスパイ組織「キングズマン」のスパイはそれぞれイギリスのアーサー王伝説の登場人物にちなんだコードネームを持つ。スパイマスターが「アーサー」で、スパイ達は「ランスロット」や「ギャラハッド」、スパイ達の後方支援役は宮廷付きの魔法使い「マーリン」。


あ、マーリン役は、マーク・ストロングです。キック・アスにも出てましたが、イミテーション・ゲームでは実在のMI6のトップ、スチュアート・ミンギス役でした。


キック・アスがある意味スパイダーマンのパロディであるのと同様に、キングズマンは007のパロディとも言える。本歌取りの要素は数知れず。 一方、どうもタランティーノ映画を意識したらしい要素も多い。分かりやすいのは、敵役の親玉バレンタインの側近の女性部下。前髪を水平に切り揃えたロングの黒髪の武闘派美人で、どう見てもキル・ビルのゴーゴー夕張=栗山千明にしか見えません。しかも彼女の両足の先端は、南アのパラリンピック短距離ランナー、ピストリウス選手のようなブレードになっていて……


バレンタイン役のサミュエル・L・ジャクスンもパルプ・フィクションや最近ではジャンゴで、タランティーノ映画での印象が強い。


さらに。パルプ・フィクションでブッチ少年が父の形見の腕時計を受け取るシーンにそっくりなシーンが。コリン・ファースは作戦中に亡くなった同僚スパイの妻に、彼の死を伝えに行く。妻は取り乱して話ができないので、コリン・ファースは同僚スパイの6歳の息子に話しかける。「何か困ったことが起きたら、このバッジに助けを求めるといい」、そういって、キングズマンのマークを型どったバッジを渡す……


以下、ネタバレ。








一番強烈な印象を残すのは、怪電波に操られたコリン・ファースの大殺戮シーン。ここで、この映画、少しタガが外れてるぞ、と気がつくが、もう遅い。その後には、マーズ・アタックで、地球の歌を聞いて火星人の頭が次々弾け飛ぶシーンのパロディのような、玉屋〜鍵屋〜の花火大会があり、ジャック・ニコルソンさながらの母親がドアをぶち破るシーンあり。悪党退治が済んでから、某国王女の下にシャンパン持って駆けつけるまで、なすすべもなく、お行儀をかなぐり捨てたシーンを見続けるしかない……


のだけど、満足感ある。アクション映画をたくさん見ていればいるほど、このシーンはあれの本歌取りかぁ、というのが山ほど見つかる。それでいて、パロディ映画ではなくて、オリジナルな話だと思わせる。


お行儀の悪さに耐性がある人は是非。


P.S. あ、そうそう、教会の前でのコリン・ファースとサミュエル・L・ジャクスンの対決シーンは、あれもキル・ビルの Massacre at Two Pines を意識してるよね。


[2015/8/10 飛行機の中でもう一度見た。二度目に見てもとても面白い。


少しネタバレを交えつつ、気になったこと。誰か分かったら教えてください。


新ランスロットに衛星をぶっ壊されたヴァレンタインは、どこかに電話をかけて、衛星を借りる。電話口でヴァレンタインは、「Eか、こちらVだ」と言ってた。Eで始まる有名な悪党は誰だ?


イニシャルといえば、エグジーが飼うパグの名前JB。アーサーとの会話で、ジェームズ・ボンドでもなく、ジェイソン・ボーンでもなく、ジャック・バウアー、とうオチだったが、もう他にないか?


ヴァレンタインは各国の要人に声をかけたことになっているので、オバマらしき姿も出てくるし、スウェーデン王女も出てきたわけだけど、他に実在する要人で、誰がおちょくられていたか?]


[2015/9/19 さらに追記。


Eか、こちらVだ」問題について、以下のブログでちょっと予想外の説が出ていて面白かった。


 『キングスマン』 知性の本質とは? :映画のブログ


ヴァレンタインが電話をかけた相手"E"は、民間宇宙開発会社スペースXを持っている、イーロン・マスクだ、という説。


確かに、各国の実在の要人をおちょくっているのだから、イーロン・マスクが出てきてもおかしくはない。おかしくはないけど…


しかし、やっぱりヴァレンタインとつるむのは、根っからの悪党だと思うのですよ。


しかも、電話の用件は、「衛星を貸してくれ」だ。スペースXはロケット打ち上げには成功していても、まだ衛星を運用はしてない。


と、書いたそばから気になって調べてみたら、なんと、こんな発表があったんですね。


 「スペースX、人工衛星使った無線通信に参入 4000基打ち上げ


事実がフィクションに追いついてきてるなぁ。でも、この記事は2015年6月10日の記事。映画が公開されたのは欧米では今年の春なので、その時点では一応まだ、スペースXは衛星事業の計画も発表してない。


で、衛星を持ってそうな根っからの悪党は誰か? しかも"E"で始まる名前といえば…


この人しかいないと思うんだけどなー。]