The Raid ― 2012年10月15日
「警官がみんな賄賂を取ってるわけじゃない」
このセリフが何度もでてくるのを見ると、インドネシアがとても心配になる。
冒頭、主人公が自宅で鍛錬。思いつめた目で、的を相手に全身を使った打撃を繰り返す。そして寝室には身重の妻が安らかに寝ている。あーこれじゃこの男生きて帰れない。状況が「男たちの挽歌2」のキットそっくりだ。顔もちょっと似てますね。
先週 looper でアクション分が不足気味だったので、今週はノンストップアクションという触れ込みの映画で補給してみた。期待に違わず、目一杯補給。げふっ。
銃撃戦と、大鉈ないし素手の格闘技が入り混じる。ばたばた人が死ぬので、お子様むけではありませんが、あまりグロテスクなシーンはありません。が、とても痛そう。スタントで振り付けでやったって、このシーンを痛くない形で撮ることはできないだろう、というシーンが次々出てきます。壁にごんごん頭を何度もぶつけられるシーンを、画面右側にある壁に向かって、頭を左から右に打ち付ける、という向きで撮っているので、手加減のしようがないように思うのだけど。
この格闘技、香港映画のカンフーとははっきり違う。格闘技は、柔道と剣道の区別もつかないぐらい何もしらないのだけど、
- 組み付いても至近距離での膝や肘の攻撃が激しくて、押さえ込めない。
- 体が倒れていようが組み付かれていようが、足が自由なら蹴りが飛んでくる。両手足4本を同時に押さえ込むことはできないので、近くによると必ず手か足で反撃を食らう。
- 関節が決まりそうで決して決まらない。関節を攻撃してないかというとそうではなさそう。決まる前に抜けまくっているように見える。
Amazon UKで買ったDVDで見ました。インドネシア語音声に英語の字幕で。これは分からん…いや、ストーリーは字幕で分かるけど、インドネシア語は何一つ分からない。「ドラゴンタトゥーの女」のスウェーデン語の方がまだ少し分かる。
で、DVDのおまけ映像に、なぜか、日本語音声の付いた、アニメ版The Raidの予告編らしきものと、クレイアニメの猫たちが戦うThe Raidの全編(っても数分ですが)が入ってました。日本語音声付の方は謎。クレイアニメ版はググると、あちこちで見られます。これは本編よりはるかにグロテスクで、「大人向けのクレイアニメを作ってます」というメッセージもクレジットに出てきたりするのですが、オチはカワイイ。
では、この先はネタバレです。ストーリーはたいしてないのですが、アクションシーンの展開を知ってしまうとサスペンスが激減するので、やはり見たい人は読まないことをお勧めします。
さて。では。
ナイフ対ピストルのメキシカンスタンドオフ。いや、 Wikipedia によると、3人以上で銃を向け合うのがメキシカンスタンドオフ(最初に撃つと不利)なので、これは違う。いやいや、そんなこと言うまでもなく、ナイフに勝ち目ないので違います。
で、ピストル持ってる方がいつまで経っても撃たずになんか言ってるので、これは隙を突かれてやられるパターンか、またひどくダメな展開だと思ったら違った。この男、実はこの映画中一番の格闘技の使い手。撃たなくても負ける気がしない、という、この男の強さを見せつけるための展開だった。これがあるので、あとのクライマックスで、この強敵相手に、主人公が味方と二人掛かりで戦っても、それが卑怯には見えないようになってる。
ラスト近く。悪徳警官が絶望して銃を自分に向ける。これは主人公が悪党を自分で始末しない、またひどくダメなパターンかと思ったら違った。まさかの弾切れで死ねません。違ったのはいいけど、これはこれで盛り下がる。この悪徳警官は直前まで敵のボスに銃を向けて引き連れていて、ボスの捨て台詞に逆上してボスを撃ち殺しているのだが、もし、その時点で弾切れしていたら、もうひと波乱あったことになる。まぁ、もう敵にも味方にも弾は残ってないし、ボスは格闘技が使える人間凶器でもないので、たいした波乱にはならないか。
このアパートに堅気の夫婦が住んでいるのがよく分からない。最後、この夫が自室の窓から、主人公たちが引き上げていくのを見てニヤリとするシーンがあって、てっきり「こいつが黒幕だったのかっ!」と思ったんですが、違いましたね。その辺、裏切りものが続出するシナリオを見すぎた目には甘く見えますが、却って爽やかかも。
この夫が「巻き添えにならないで」という妻の懇願にも関わらず、主人公達をかくまうために自室のドアを開けるシーンや、敵の幹部が実は主人公の兄弟で、迷うことなく主人公側に付く、という展開など、居るところには信義に厚い人間が居る、というメッセージが何度が繰り返されていて、「警官がみんな…わけじゃない」というセリフと呼応します。たぶん、これがインドネシアでは受けるんだろうと思うけど、そう思えば思うほどやっぱり心配だなぁ。
逆に言えば、意外な黒幕続出の映画でないと受けない米国や日本は、実際にはそんなことそうそうないよね、悪代官は居るけど、助さん格さんが裏切ったりするわけはないよね、という、現実への信頼が結構あるのかもしれません。
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