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オデッセイ2016年02月08日

ステロイドでドーピングしたアポロ13。あっちが好きな人はこっちも是非。アポロ13知らない人にもおすすめ。


  The Martian (邦題: オデッセイ)


 原作 The Martian (邦題: 火星の人)


うちの奥さんと二人で見てきました。IMAX 3D。奥さんによれば「あんまり3Dにした甲斐がなかった」そうですが、僕は広大な火星の風景をIMAX 3Dで見られてよかったなぁ。


火星の大平原を進むローバーは、西部の荒野を進む幌馬車のよう。アメリカ人なら胸にこみ上げるものがありそう。


かなり原作に忠実で、登場人物たちが交わすセリフの中の割合細かいジョークも再現されていた。しかし、彼らのジョークのスタイルはきわど過ぎて、ちょっとついていけない。火星にワトニーを置き去りにしたチームのメンバーが、数ヶ月ぶりにワトニーと交信するときのセリフが、「置き去りにしてすまない。でもみんな君のことが嫌いだったんだよ。」これが言えるぐらい仲が良かったってことなんだろうけど。


映画では臭いがしないのが残念、というか、しなくてよかったのかもしれない。畑の肥やしを準備するシーンや、何ヶ月もシャワーなしに過ごした後のシーンがある。原作を読んだ時には、結構むせそうな濃厚な気体が襲ってくる印象があった。でも、映画では、どちらのシーンも描かれていたけど、控えめな表現でした。


映画も原作もどちらもいいのだけど、良さはそれぞれ違う気がする。


原作の良さは、分かりやすい語り口。難しい科学的なあれやこれやの発想を、驚くほどとっつきやすく説明している。映画の方は、原作のおかげでその辺かなり得をしているけど、原作のわかりやすさには及ばない。原作ではワトニーが書いた日誌の文章に書いてあることが、映画では、ワトニーがカメラに向かって一人で語っている。それも業務日誌なんだけど、やはりあまり細かいことを語るシーンにすると、映画として無理が出てくる。


また、原作には、「一度に一つずつだ」というセリフが何度もでてくる。これは、困難に立ち向かう上でも、有効な考え方だろうけれど、実は小説の読者に向かって込み入った話を説明する上でも、一度に一つずつの方が都合がよかったんだと思う。


じゃあ映画の良さは、というと、火星の風景と、宇宙船ヘルメスの造形。


進んでも進んでも景色が変わらなそうな火星の広大さは原作を読んでも感じられたのだけど、ある地点から見渡した時の火星の印象は、原作を読んでいても想像しきれなかった。映画の中の火星の景色は気が遠くなりそうだった。かつて火星に送り込まれた無人探査船パスファインダーをワトニーが探しにいくシーンがある。原作だと、パスファインダーを見つけるシーンはあっさりしていて、見つけた後でワトニーがあれこれ語っているのだが、映画では、パスファインダーがあるはずの地点にワトニーが来ても、見渡す限り何もない。絶望的な広さが強く印象に残る。


ヘルメスは本体の回りに回転する居住区があって、遠心力で疑似重力を作り出している。SFでは珍しくもない仕組みだが、原作を読んだときには、そもそもそういう設定に気が付かなった。映画の中では、本体と回転居住区の間の接合部のシーンが何度も出てくる。船内も、船外からのシーンも。船内では宇宙飛行士たちが無重力の本体を漂ってきて、重力がある居住区につながる「縦穴」に飛び込むと、そこにははしごがあって、その両脇に手を添えてするすると滑り降りていく。火事の知らせを受けて、出動のために消防署のポールを滑り降りる消防士さながら。船外では、ヘルメスの表面の構造につかまりながら船首から船尾まで行こうとする宇宙飛行士が、回転居住区のスポークの隙間をタイミングを計って潜り抜けるシーンがある。


マット・デイモンはワトニー役がよく似合ってました。最初にこの配役を聞いたときは合わないとおもったのだけど。だって、植物学者の宇宙飛行士と聞いて、あんなマッチョな人物を想像しないでしょ?でも、映画を見ると、あのくらい体力がないと、畑の世話もローバーの改造もできないなぁと納得したのだった。


船長ルイス役の人はどこかでみたような気がするのだけど、調べたかぎりでは実は見てなかった。Rome の セルウィリアとか、SHERLOCK シーズン3でマグヌッセンに脅迫される議員とかをやってた Lindsay Duncan って人に似てますが、歳が違いますね。この人は Jessica Chastain てのか。最近いろいろよさげな映画に出てます。見てみなきゃ。


中国はこの話ではおいしい役どころ。救出計画が失敗して悲嘆にくれるNASAに力強い手を差し伸べる白馬の騎士。日本はまったく出番なかったな。


とある行為が原因で、「この仕事が終わったら辞任してもらう」と言われていた人は、すべてが終わった後で、辞めずにすんだのかな。最後のシーンをちゃんと見てれば分かったと思うのだけど、見逃したなぁ。


あ、そうそう、エンドクレジットみてたら、見慣れない綴りの名前が大量にあった。東ヨーロッパ系だと思うのだけど、それはもうたくさん。一番最後に、ハンガリーの何とかという組織に謝辞があったので、ハンガリーなのかもしれない。たぶん、スペシャルエフェクツ関係のチームかな?



スター・ウォーズ フォースの覚醒2015年12月30日

下の娘と見に行った。娘は金曜ロードショーで放送していたエピソード4を見ただけだったが、違和感なく楽しめたらしい。


Star Wars: The Force Awakens (邦題:スター・ウォーズ フォースの覚醒)


グランベリーモールの109シネマで、IMAX 3Dでみた。最近の3Dは見やすい。昔と違って、これ見よがしに立体感を強調したシーンはなくて、ひたすら自然な立体感が感じられてよかった。


IMAXは10年以上見てなくて、昔見たときはとても巨大なスクリーン、という印象だったのだけど、今回はそうでもない。でも、画面は確かに美しい。音響もよかった。


映画自体の満足度高い。世間でもエピソード4のリメイク、みたいな評判が立っているが、いい意味でその通り。オールドファンには嬉しい、エピソード4のあのシーンに似せたんだな、とわかるシーンがたくさんある。4だけでなく、以前のシリーズのあちこちに触れている感じ。


素晴らしい、と思ったのが、物語の中で使われているコンピュータのスクリーンに映っている映像が、エピソード4の頃とあまり変わっていないこと。黒い背景に緑色の線だけで絵を描く、ワイヤーフレーム方式の絵がレジスタンスの指令室などで使われていて、エピソード4と同じ世界なんだと分からせてくれる。


以前のシリーズをあまり知らない娘も、全部まんべんなく面白かったらしい。ハン・ソロが急におじいさんになって出てきた落差には驚いたらしいが。4を見てからほぼ間をおかずに7を見ると、そりゃそう思うようなぁ。


BB-8のおもちゃがめっちゃほしい。あの頭を乗せたまま、胴体がコロコロ転がって走り回る動きがしっかり再現されているらしい。欲しいが、27,000円は高いなぁ。


以下、ネタバレあり。なるべく固有名詞は出さずに、見た人なら分かるように書いてある。











見に行くまでは、今回宣伝に露出の少ないあの人がダークサイドに落ちる物語だと思い込んでいた。なので、その辺の背景的ストーリーには意外性があった。


一方、7単独のストーリーとしては、4のリメイクと言われるだけあって、意外性はほとんどない。


主人公がフォースに覚醒するスピードが、ちょっと速すぎやしませんか、という感じはある。


レイもフィンもポーも、新しいキャラクタなのに、驚くほどこの世界になじんでいる。


敵から逃げるため、最新型の宇宙船目指して必死で走るレイ。あっちの船はどうだ、と言われて、あんなオンボロ、と一蹴するが、それを聞くだけで、その船に乗るはめになるのはすぐわかる。でもそれが、「例のあの船」だと見る前にわからなかったのはファンとして不覚!


ええと、The Raidの主人公のIko Uwaisとかはどこに出てたんだっけ。調べてみると、ハンソロを追っかけてきた賞金稼ぎの一人だったらしい。それはもったいない。


が、それを調べていたら、同じページにもっと驚きのニュースが。007の Daniel Craig が、じつは素顔を見せずに、ストームトルーパーの一人として出ていたんだって!しかも、フィンは別格として、今回一番目立っていたストームトルーパーの中にいたそうだ。娘にそう説明したら、一発でどのトルーパーか当てたので、そこまで言えば、映画を見たあたなにもわかりますね?



The Second Best Exotic Marigold Hotel2015年08月11日

ジュディ・「M」・デンチと、マギー・「ヴァイオレット」・スミスが夢の共演。


  The Second Best Exotic Marigold Hotel (邦題未定、でも多分:マリーゴールドホテルで会いましょう2)


って実は続編だったらしい。 The Best Exotic Marigold Hotel 、邦題「マリーゴールドホテルで会いましょう」、って映画があるのは知らなかった。飛行機の中で見ました。


舞台はインド、ジャイプール。半分ぐらいかそれ以上にインド映画。踊りのシーンもちゃんとある。


インドの小さなホテルに集まるイギリス・アメリカの高齢の男女。ホテルを守り立てようとハッスルする若いインドの支配人。


リチャード・ギアも出てるな、と思っていたら、なんと。


ペネロピー・「イザベル」・ウィルトンまで登場。ほら、ダウントン・アビーのマシューのお母さんですよ。


なんて豪華なジジババ映画。


ドイツ映画の Bis zum Horizont, dann links! にも似ているけれど、もっと華やか、もっと派手。


"The second best..." って変な題名だとは思ってた。普通に読むと、「ベスト」ではなくて、「二番目にいい」って意味なので、誰がそんな名前をホテルにつけるんだろうと思うし、それが映画の名前になっているのも変。


映画を見ると、ホテルの支配人が、二軒目のホテルを建てたがっていて、一軒目が "The best ..." だから、二軒目は "The second best ..." だってことらしい。


それで一応納得してたので、映画自体が二作目の続編だ、というのは予想外だった。


タランティーノっぽいキングズマン2015年04月20日

マーズ・アタックを思い出した。よく似たシーンがあるんだよね。


 Kingsman: The Secret Service (邦題:キングスマン)


キック・アスの製作者達が作ったスパイ映画。とっても面白かったけれど、キック・アスと同じく、お行儀の悪い映画です。決して子供連れで行ってはいけません。


スパイ映画のコメディといえば、オースティン・パワーズという、行儀の悪さでは誰にも負けない映画もあるんだけど、あれとこれでは行儀の悪さの種類が違う。こっちの行儀悪さは、キック・アスで、ヒットガールが薙刀で次々と悪漢を倒すシーンがありますが、あの感じです。ただし、ここで「悪漢を倒す」というと、お行儀の悪さが伝わらない。言い方を変えると、あれは、「10歳ちょっとの少女が嬉々として小悪党を刺し殺し続ける」というシーンなわけで、その身も蓋もなさを10倍増しにしたと思えばだいたいあってる。


スパイ映画の伝統にのっとり、この映画のスパイ組織もイギリスにある。イギリスらしさを豪華なキャストが盛り上げてます。主役のベテランスパイは、英国王のスピーチで国王だったコリン・ファース。また、オースティンの父ちゃん=これも伝説のスパイ、ナイジェル・パワーズ役のマイケル・ケインが、この映画ではスパイマスター、つまりスパイ組織のトップをやってます。


このスパイ組織「キングズマン」のスパイはそれぞれイギリスのアーサー王伝説の登場人物にちなんだコードネームを持つ。スパイマスターが「アーサー」で、スパイ達は「ランスロット」や「ギャラハッド」、スパイ達の後方支援役は宮廷付きの魔法使い「マーリン」。


あ、マーリン役は、マーク・ストロングです。キック・アスにも出てましたが、イミテーション・ゲームでは実在のMI6のトップ、スチュアート・ミンギス役でした。


キック・アスがある意味スパイダーマンのパロディであるのと同様に、キングズマンは007のパロディとも言える。本歌取りの要素は数知れず。 一方、どうもタランティーノ映画を意識したらしい要素も多い。分かりやすいのは、敵役の親玉バレンタインの側近の女性部下。前髪を水平に切り揃えたロングの黒髪の武闘派美人で、どう見てもキル・ビルのゴーゴー夕張=栗山千明にしか見えません。しかも彼女の両足の先端は、南アのパラリンピック短距離ランナー、ピストリウス選手のようなブレードになっていて……


バレンタイン役のサミュエル・L・ジャクスンもパルプ・フィクションや最近ではジャンゴで、タランティーノ映画での印象が強い。


さらに。パルプ・フィクションでブッチ少年が父の形見の腕時計を受け取るシーンにそっくりなシーンが。コリン・ファースは作戦中に亡くなった同僚スパイの妻に、彼の死を伝えに行く。妻は取り乱して話ができないので、コリン・ファースは同僚スパイの6歳の息子に話しかける。「何か困ったことが起きたら、このバッジに助けを求めるといい」、そういって、キングズマンのマークを型どったバッジを渡す……


以下、ネタバレ。








一番強烈な印象を残すのは、怪電波に操られたコリン・ファースの大殺戮シーン。ここで、この映画、少しタガが外れてるぞ、と気がつくが、もう遅い。その後には、マーズ・アタックで、地球の歌を聞いて火星人の頭が次々弾け飛ぶシーンのパロディのような、玉屋〜鍵屋〜の花火大会があり、ジャック・ニコルソンさながらの母親がドアをぶち破るシーンあり。悪党退治が済んでから、某国王女の下にシャンパン持って駆けつけるまで、なすすべもなく、お行儀をかなぐり捨てたシーンを見続けるしかない……


のだけど、満足感ある。アクション映画をたくさん見ていればいるほど、このシーンはあれの本歌取りかぁ、というのが山ほど見つかる。それでいて、パロディ映画ではなくて、オリジナルな話だと思わせる。


お行儀の悪さに耐性がある人は是非。


P.S. あ、そうそう、教会の前でのコリン・ファースとサミュエル・L・ジャクスンの対決シーンは、あれもキル・ビルの Massacre at Two Pines を意識してるよね。


[2015/8/10 飛行機の中でもう一度見た。二度目に見てもとても面白い。


少しネタバレを交えつつ、気になったこと。誰か分かったら教えてください。


新ランスロットに衛星をぶっ壊されたヴァレンタインは、どこかに電話をかけて、衛星を借りる。電話口でヴァレンタインは、「Eか、こちらVだ」と言ってた。Eで始まる有名な悪党は誰だ?


イニシャルといえば、エグジーが飼うパグの名前JB。アーサーとの会話で、ジェームズ・ボンドでもなく、ジェイソン・ボーンでもなく、ジャック・バウアー、とうオチだったが、もう他にないか?


ヴァレンタインは各国の要人に声をかけたことになっているので、オバマらしき姿も出てくるし、スウェーデン王女も出てきたわけだけど、他に実在する要人で、誰がおちょくられていたか?]


[2015/9/19 さらに追記。


Eか、こちらVだ」問題について、以下のブログでちょっと予想外の説が出ていて面白かった。


 『キングスマン』 知性の本質とは? :映画のブログ


ヴァレンタインが電話をかけた相手"E"は、民間宇宙開発会社スペースXを持っている、イーロン・マスクだ、という説。


確かに、各国の実在の要人をおちょくっているのだから、イーロン・マスクが出てきてもおかしくはない。おかしくはないけど…


しかし、やっぱりヴァレンタインとつるむのは、根っからの悪党だと思うのですよ。


しかも、電話の用件は、「衛星を貸してくれ」だ。スペースXはロケット打ち上げには成功していても、まだ衛星を運用はしてない。


と、書いたそばから気になって調べてみたら、なんと、こんな発表があったんですね。


 「スペースX、人工衛星使った無線通信に参入 4000基打ち上げ


事実がフィクションに追いついてきてるなぁ。でも、この記事は2015年6月10日の記事。映画が公開されたのは欧米では今年の春なので、その時点では一応まだ、スペースXは衛星事業の計画も発表してない。


で、衛星を持ってそうな根っからの悪党は誰か? しかも"E"で始まる名前といえば…


この人しかいないと思うんだけどなー。]


イミテーション・ゲームでうれし泣き2015年03月13日

いくつものテーマが重なりあう、嘘のように精緻に組みあがった、それでいて実話なストーリー。 五つ星級のおすすめ。


 イミテーションゲーム (原題: The Imitation Game)


第二次大戦時のドイツ軍の暗号と、それを解読したイギリスの数学者達。


暗号解読に使われた、それまでに例を見ない特別な機械。


凡人には理解できない天才の思考と、理解されない天才の苦悩。


イギリスの同盟国であるソ連との微妙な関係。


暗号の解読結果の利用に伴う、理不尽だが逃れようのない制約。


女性への偏見、同性愛者に対する迫害。


天才が成し遂げたいくつもの偉業とそれに見合わない不幸な晩年。


カンバーバッチが主人公アラン・チューリングを演じたのは大成功。論理的であることにおいて圧倒的な強さを持ちながら、人間的であることにおいて著しい弱みを見せる、チューリングの姿はBBCのシャーロックにそのまま重なって見える。


すごく楽しみにしていた映画で、うきうきしながら見始めたのだけど、始まって間もなく、説明しがたい感情の高ぶりが襲ってきて、嬉しくて泣きそうになりながら見ていた。終盤、話は暗くなるのだけど、決して悲しいからではない理由で、映画が終わる頃にはぼろぼろ泣いていた。つまり、あれですよ。美味しんぼで、故郷の味のご馳走を出された京極さんが、

 「なんちゅうもんを食わせてくれたんや…なんちゅうもんを…」
といってぼろぼろ泣いていたのと同じ状態。
 「これに比べると○○ー○ー・ゲームはカスや。」
あ、書いちゃった。書かないでおこうと思ったのに。そもそも比べるのが間違いや。


うちの奥さんと二人で見に行きました。奥さんも、「よかったねー」と言っていたのは、決してカンバーバッチファンだからだけではない様子。「こんなにいい映画を観たのは久しぶり」、とも。


シャーロックのカンバーバッチ以外にも、いろんなドラマや映画で見覚えのある役者が出てきます。キーラ・ナイトレイは別格として、まず、日本でも今をときめくダウントン・アビーのブランソン役のアレン・リーチは、チューリングと一緒に働く数学者の一人。MI6の黒幕ミンギスを演じたのは、ロバート・ダウニーJr主演の映画のシャーロック・ホームズの中で、悪役ブラックウッド卿で出ていたマーク・ストロング。彼はキック・アスでもレッド・ミストの父ちゃんとして出ていたり、すごくよく見かける気がする。それから結構強烈な印象を残したのは、チューリングをあからさまに敵視するデニストン中佐で、この人はゲーム・オブ・スローンズでラニスター家の当主、タイウィン・ラニスターをやってました。ウェスタロス最大の権力者であり、かつ実の息子のティリオンを忌み嫌うあたり、キャラがデニストン中佐と同じ。ダンス・ウッドって人なのか。


あと、初めてみる人ですが、学生の頃のチューリング役、アレックス・ローサーの演技も見事でした。人間関係に不器用なチューリングが唯一の親しい友人に対してもつ様々な思いを表情に浮かべてみせてました。


以下、ネタバレします。見ていない人は見てからどうぞ。








さて、もういいかな。


アラン・チューリングのエニグマ暗号解読の話や、計算機科学の創始者としての業績や、数奇な人生については以前から色んなところで読んだことがあったので、話の大筋は知っていたのだけど、映画にして絵になりそうなのは暗号解読だけなので、見る前には、暗号解読したらめでたしめでたしで終わる映画かと思い込んでました。とんでもない思いこみで、暗号や解読方法の詳細にこそ立ち入らないものの、チューリングの重層的な業績をうかがい知れるぐらいには色んな要素を描き込んでました。


エニグマ暗号解読自体については、かつて月間ASCIIに連載されていて、本にもなった 星野先生の解説 が懐かしいけど、正直理解が及びませんでした。ボンベ、という解読装置の名前だけが印象に残ってます。


映画の題名のイミテーション・ゲームは何のことだろう、と思っていたのだけど、チューリングテストのことらしい。チューリングテスト、というのは、将来人工知能が発達したとき、どこまで発達したら人と同等の知能を得たといえるか、という問いに対して、チューリングが提案した判定法。人間の審判が、壁の向こうにいる被験者と文字だけでやり取りをして、被験者が人間か、人工知能かを探る。審判が人間だと確信した被験者が人工知能だった場合、その人工知能は人と同等の知能を持つと言える、という話。まぁ、一つの考え方ではある。


暗号を解読しても、その結果を使うのはとても面倒、という話も、かなり丁寧に説明してました。敵の暗号を解読したら、そのことを敵に知られてはならない。知られたら、敵は暗号の仕組みを変えてしまい、また解読をやり直さなければならなくなる。そして、解読したことを敵から隠すためには、解読して得た情報を使って、味方を救ったり敵に奇襲をかけたりしてはいけない。暗号が漏れない限り分かるはずがない情報に基づいてこちらが行動すると、暗号が解かれていることに敵は気づいてしまうから。


では、暗号解読は全く無駄かというと、そうではなくて、解読結果を使う際に、暗号が解かれていると相手が気がつかないように工夫すれば使えます。そのために、まず解読結果はめったに使わないようにします。100回の戦闘が100回とも失敗すると、敵は何かおかしいと思いますが、数回急にこちらの行動が変わっただけでは、偶然そうなったのかもしれず、敵は確信が持てません。さらに、解読結果を使う場合には、なぜその情報をこちらが知ったのかを説明できる、嘘の情報を流します。


ニール・スティーブンスンのクリプトノミコンはフィクションですが、アラン・チューリングとエニグマ暗号解読の話が出てきます。そこでは、英軍が上記の隠蔽工作を行うためだけの専属部隊を持ち、主人公の一人はその部隊に所属して、その工作のためだけに敵地で活動していたりします。でも、エニグマ暗号が解読されたことは最高機密なので、この専属部隊には知らされておらず、この部隊は分けもわからず謎の任務を遂行する羽目になります。


あと、ぜんぜん今まで聞いたことがない話としては、ブレッチリーパークの数学者達の中に、ロシアのスパイがいて、しかもMI6はそれを知っていて泳がせていた、というんですが、これは実話かなぁ。いまググッたら、ジョン・ケアンクロスは確かに ソ連のスパイ だったらしいけど、MI6が当時それを知っていたかどうかは何も言及がないなぁ。


ジョン・ケアンクロス役のアレン・リーチは、ダウントン・アビーでも、ブランソン役でロシア革命に共感を寄せるセリフを喋ってましたね。あの時代の社会主義者っぽく見える顔なのかなぁ。