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鑑定士と顔のない依頼人2014年07月12日

初老の男が若い女性に恋する話。そう聞いただけで、結末は分かりそうなものだ。だけど、男の願望が絡むとつい、あり得ない期待を抱いてしまう。


 La migliore offerta (English Title: The Best Offer, 邦題: 鑑定士と顔のない依頼人)


男は超一流の美術鑑定士。地位も名誉もあるが、女性とは縁のない人生を送ってきた。プライドは高く、一見の客の依頼はまず受けない、嫌ったらしい男。一流美術品のオークションを主催するが、時々自分が欲しい絵があると、偽の入札者を雇って落札させている。生涯をかけて、そうして集めたのは女性の肖像画ばかり。自宅には秘密の部屋があって、その壁面を秘密のコレクションが覆っている。その部屋の真ん中に置いた椅子に座って、酒のグラスを傾けながら、絵を眺めるのがこの男のくつろぎ方。


で、分かる人にはすぐ予測がつく通り(僕には分からんかったけど)、これが若い女性に恋をして、だんだん改心して人間味を増して行く。


女性は鑑定の依頼人。両親が亡くなって、お屋敷いっぱい分の美術品があるので、処分を頼みたい、と電話で言ってくる。男は文句を言いながらも一応受けて、屋敷に行ってみるが、門には鍵がかかっていて、雨の中待ちぼうけを食らう。ところが、女性は後日また電話を掛けてきて、謝りつつ、依頼を受けてくれと泣いて懇願する。男が再び屋敷に行くと、今度は管理人が応対するが、女性は姿をみせない。怒る男。また声だけで謝る女。振り回されながら、深みにはまって行く様子が面白くて、見てるこっちもはまって行く。


若い男もいる。鑑定士の数少ない仲間で、金属の加工や機械修理の工房みたいな店をやっている。細工屋と呼んでおこう。鑑定士が女性の屋敷で見つけた、奇妙な歯車細工を渡すと、「これは古い時代の機械人形の部品だ」と言って、「もっとこんな部品がないか。機械人形を再現してみたい。」と鑑定士に頼む。鑑定士が屋敷に行くたびに、新しい部品が見つかって、細工屋は少しずつ機械人形を組み立てる。


細工屋は、鑑定士とは対照的に、女性との付き合いが上手い。店にきた女性客ともすぐ親しくなって、修理が済んだ品を受け取った客が、帰り際に細工屋の頬にキスして帰っていく。付き合っている彼女もいて、店を閉める頃にやってきて、一緒にバイクに二人乗りで帰っていく。


細工屋は、鑑定士から、ある「友人」の悩みについて相談を受ける。その友人は、なかなか姿をみせない女性に振り回されて困っているそうだ。もちろん細工屋には「友人」とは誰のことか分かっていて、熱心にその女性へのアプローチをアドバイスする。


細工屋のアドバイスを受けて、いまだ姿を見せない女性のために、鑑定士は大きな花束を屋敷に持っていく。女性は姿を見せないまま会話を交わし、打ち解けるかに見えた次の瞬間、唐突に「髪を染めてるのね。嘘をつく人は嫌い!」と理不尽な非難を鑑定士に向ける。でも、彼はそれまで染めて、びしっとオールバックに固めていた髪を、白髪交じりのナチュラルな髪型に変える。







いやー、これ以上は書いてられないし、書くべきでもないし、書かない。飛行機の中で、評判高い「グランド・ブダペスト・ホテル」とこれを見たのだけど、「グランド・ブダペスト・ホテル」が期待通りとても面白かったのに対して、こっちはまるで予備知識無しに見て、想定外に面白く、衝撃を受けました。あまりにはまってしまって、どう感想を書いていいかも分からず、だらだらとあらすじを書き連ねることしかできない。


設定がいい。キャラクターがいい。女優がいい。ネタがいい。謎がいい。オチの衝撃がいい。結末の余韻がいい。もう一度みたい。


イタリア映画なので、出てる俳優を見ても、「あれにも出てた、これにも出てた」という印象がない。依頼人役のシルビア・ホークスは、オランダではテレビドラマなどで活躍していたが、世界的にヒットした映画はこれが始めてらしい。大人なのだけど、幼くみえる外見で、ロリータコンプレックスを刺激する。


あああ、いま調べて気がついた。調べるまで気がつかなかったのは不覚ー。鑑定士のジジイは、じい様は、おじいさんは、翁は、「英国王のスピーチ」の言語療法士じゃないかぁぁぁ。どっかで見たことあると思ってたのにぃ。ジェフリー・ラッシュ、という名前では覚えていませんでした。


こんなにもう一度見たい映画は久しぶりだ...日本の公式サイトでは、リピーター割引キャンペーンをやっていて、「二度目に見るとまったく違う印象が」とか書いてあるけど、そういうのは割とどうでもいい。映画全体の雰囲気が好きだ。


あ、8月2日にDVDが出るのか。もう少しの辛抱だ。



超高速!参勤交代は指輪物語だ2014年07月26日

裂け谷湯長谷藩を出発した旅の仲間は、そのうち殿とはぐれてゴンドール取手で敵の勢力に襲われる。危機を救ったのは、もう居なくなったはずの魔法使いガンダルフ忍者雲隠段蔵だった。


 超高速!参勤交代


うちの奥さんが本屋のレジに並んでたら、後ろの人が携帯で誰かに「すっごく面白かったわよ~」と言ってたというので、奥さんと一緒に見に行った。いや、実はその前から予告編を見て、ちょっと気になってはいたのだ。


期待通り、面白かった。寅さんや釣りバカに通じる予定調和な世界なんだけど、設定の極端さ加減がよいのと、キャラがなかなか生きています。


もっと面白かったのは、「指輪物語」や「ホビット」を思わせる要素が色々あったこと。映画館でニヤニヤしながら見てました。驚いた。この映画作った人たちは、結構「指輪」を意識してるんじゃないかと思う。


江戸の悪徳老中の陰謀で、参勤交代のため通常8日かかるところを5日で江戸に参上せよ、といわれた小藩、湯長谷藩の殿様と家来数人が、近道するため、まっとうな街道を外れて山中の獣道を進む。


殿様は人格者ではあるが、ヒーロータイプではなく、フロドやビルボに通じるものがある。家来達には知恵者も、武芸の達人もいるが、皆どこか間が抜けていて、「ホビット」のドワーフたちにも似ていれば、「指輪」で裂け谷から出発した9人の旅の仲間にも似ている。レゴラスみたいな弓矢の達人も居れば、サムみたいに料理が上手いのもいる。


えーっと、ちょっと公式サイトからキャラクタ紹介を引っ張ってくると、


雲隠段蔵:抜け忍 ->ガンダルフ
相馬兼嗣:知恵者の家老 ->メリー
荒木源八郎:刀剣の腕が立つ藩士 ->ギムリ
増田弘忠:動物と仲良しの馬回役 ->ピピン
今村清右衛門:槍に秀でる藩士 ->サム
秋山平吾:冷静沈着、理屈好きの藩士 ->ボロミア
鈴木吉之丞:弓の名手 ->レゴラス

 こんな感じでしょうか。で、殿様は、


内藤政醇:愛される殿様 ->フロド、かつアラゴルン

を兼ねてます。あ、増田が連れているサル、菊千代は、ゴクリかぁ。


残念ながら敵がしょぼい。悪老中と、公儀隠密、それに忍者達。「死して屍拾うものなし」とか二回も言われても…


このままいくと、「ホビット」と同じく、おっさんばかりのむさくるしい映画になるわけですが、アルウェン並のきれいどころが出てきます。アルウェンとはキャラクタが全然違うけど。


家来とは別行動して、宿に一人で泊まる殿様。そこで出会った気の強い飯炊き女。これがとてもきれいなのだけど、俳優が誰なのか、サッパリ分からない。「最近の日本の女優はもう分からなくなったかなぁ」と思っていたら、エンディングの橋の上のシーンでやっと分かりました。深田恭子でしたよ。


殿様の、佐々木蔵之助は、二枚目とギャグが両方できて、はまり役でしたが、ポスターをちらっと見たときは、私は大泉洋が出ているのかと思ったのでした。すると、家老は当然、西村雅彦ではなくて、藤村ディレクターでやってほしいわけで、


殿様大泉「ぼかぁ決めたよ。江戸まで五日間で行くよ。」
家老藤村「行けないだろ、今日江戸から戻ってきたばっかなのに。」
殿様大泉「行くっつったら行くんだよ。」
雲隠ミスター「...」

大泉バージョンも見たかった。