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メイスン&ディクスン2014年12月20日

全集の刊行が発表されたのが、2010年だったと思う。それで最初に出たのがこれだった。


 メイスン&ディクスン トマス・ピンチョン 新潮社


読もうと思った理由は、色々ある。


大学にいた頃に、本屋でVだったか重力の虹だったかが平積みで置いてあるのを見かけて、なんだか気になっていたこと。多分、手にとってみたりもしたと思うのだけど、結局読まなかった。


大好きな、ニール・スティーブンスンのクリプトノミコンが、トマス・ピンチョンの本に似ている、とどこかで読んだこと。それで、大学の頃のことも思い出して、興味はもったのだけど、スティーブンスンのバロックサイクルを読むだけでも大変で、トマス・ピンチョンにまで手を出す余力はなかった。バロックサイクルは2巻まで読み終えて、3巻は途中のまま。


そうこうするうちに、時は過ぎ去って2010年、全集が出た。



何かのお告げと信じて、メイスン&ディクスンと、逆光まで買った。それから4年、やっとメイスン&ディクスンを読み終わった。買ったときは、そんなにかかるとは思わなかった。でも、少し読んで積ん読にしてからは、読み終わる日がくるとは思わなくなった。


今年、色々生活が落ち着いて、家でまとまって本を読む時間を取る習慣が戻ってきた。で、メイソン&ディクスンの続きを読み始めたら、驚いたことに上巻を読み終わってしまった。これはいける、と思って、下巻も読み始めたら、最後まで読んでしまった。まぁ、数週間かかったけど。3年間積ん読だったのに。


急に読めるようになったのには、 Pynchon Wiki: Mason & Dixonをあわせて読み始めたから、ということもある。この Wiki には、各章について、いろんな注釈が書かれている。本自体にも注釈が入っているのだけど、Wikiが注釈をつけている語句と本の注釈が説明している語句は、当然ながら違う。その辺の、何に説明が必要で何には不要か、という見立ての違いが面白くて、本と並行してWikiを読み進めた。それで、却ってはかどった。


この本は小説なのだけど、全体を通したストーリーは割合どうでもいい。各章に、奇妙なエピソードや、薀蓄が語られていて、それをスナック菓子のようにボリボリむさぼって味わう本。スティーブンスンの本とは、確かにその辺が共通している。


メイスンとディクスンは、実在の人物で、星を精密に観測することで地上の地点の緯度経度を測定して、精密な地図を作る技術を持つがゆえに、イギリス政府から任命されて、まだイギリスの植民地だったアメリカの、ペンシルヴェニアとメリーランドの州境となる線を引いた。これは今も、メイスン・ディクスン線として知られている。


時は、アメリカ独立戦争勃発の十年ほど前で、ペンシルヴェニアの首都フィラデルフィアにはベンジャミン・フランクリンがいるし、ニューヨークにはジョージ・ワシントンもいる。そういう実在の人物に混じって、もちろん架空の人物も多数登場するのだけど、それどころか、人語を喋る犬や、料理人に付きまとう機械仕掛けの鴨、とかが、さも当たり前のように出てくる。


普通のストーリー小説やミステリを読むような意味で面白いわけぢゃないので、ミステリを読むとすぐ途中を飛ばして最後の謎解きを読んでしまう、そこの君にはお勧めしない。「結局何がどうなったか」はどうでもいい本なのだ。メイスンとディクスンは線を引き終えたに決まっている。


じゃぁ、細かいエピソードや薀蓄が興味深いかというと、この本の場合、1760年頃の北米植民地の歴史がネタなので、その辺の知識がないと、面白がれないところがある。だから、Wikiのお蔭ではかどった。


クリプトノミコンなら、歴史ネタとは言っても第二次大戦だし、エニグマ暗号と現代のITのネタもあるし、元々興味が続くのだけど、メイソン&ディクスンは、正直、そんなには乗れなかった。


逆光を果たして読むのかどうか、まだ分からない。でも本屋の棚では重力の虹が待ってるんだよな……


System of the world (バロックサイクル第三巻)を読むのが先だな。


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