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キングとランダ2013年01月27日

昨日書いた Django Unchained の記事で、でクリストフ・ヴァルツが演じるキング・シュルツのキャラと、イングロリアス・バスターズでヴァルツが演じたハンス・ランダのキャラが、なんだかあまり変わってないような気がする、と書いた。


キングは主人公ジャンゴを教え導く善人として描かれるのに対し、ランダはユダヤ人狩りをするナチ将校=全くの悪人として描かれる。


にも関わらず、似てるってのは、もちろん、ヴァルツの愛嬌のあるパッチリした目やよく回る口、ということもあるのだけど。


どちらも人殺しで、しかも時の政府の要請を受けて、なんら良心の呵責を感じることなく、人を殺し続けている点が同じ。


キングは、連邦の司法システムで生死を問わないお尋ね者とされた賞金首を探し、見つけたら殺す。一切予告なし。おとなしく逮捕されるという選択肢は与えない。


かつての殺人犯が、荒れ野の中の小さな畑を息子と二人で耕しているのを見つけたら、遠くからライフルで狙撃する。


ランダはナチスが絶滅を意図した無辜のユダヤ人を対象にするので、そもそも全く違うといえば違うのだけど。


国家のお墨付きを得た殺人という点では、ブラピの率いるナチス狩りチームも、それをいうなら戦争遂行中の兵士全般も同じか。


ただ、物語の終盤で、キングとランダの行動には大きな違いが現れる。


ランダは、あまつさえナチスを裏切り、連合国に膨大な恩を売って、戦後の新体制の中でも免罪を獲得する。


キングはぎりぎりの瞬間で私財をなげうってブロムヒルド=ジャンゴの妻の命を救う。


キャンディが取引書類を弁護士に書かせている間、キングの心に浮かぶのは、失った金ではなく、日中キャンディが犬に襲わせて殺した奴隷のこと。


そして「すまない、我慢できなかった。」と言った時、彼の行動にはもはや国家の後ろ盾がない。


それに気づいたとき、やっと僕としてはキングを善人として捉えることへの抵抗感が減った。


ジャンゴやショシャナは最初からストーリー上免罪されてるんですよ。時の巨悪の直接の被害者だから。