Bis zum Horizont, dann links! ― 2012年09月01日
ラストシーンで、ティートゲンが海を眺めながら、傍らのもう一人の老人につぶやく。
「考えてみりゃ、そう悪くなかったな。」
「いや、全くだ。海にも来れたし。」
「じゃなくて、私の一生のことを言ったんだ。」
「……そうとも。素晴らしかったといってもいい。」
Bis zum Horizont, dann links! (邦題未定: 地平線まで、そして左!)
とっても予定調和な映画だったけど、たまにはこういう映画も見たくなる。こないだ、家の近くの映画館 Die Kamera で見てきました。
こないだの邦画の「ロボジー」とかもそうだけど、ヌルイ映画もいいね。あー、歳食っちまったなぁ。僕よりずっと上の世代が寅さん映画をあれだけ見に行ったのも、そういう理由なんだろうか。
ドイツ映画をドイツ語で見たのだけど、ほとんど設定から想像されるとおりの展開をするので、まったく困らなかった。
老人ホームの日々の暮らしに退屈したメンバーが、遊覧飛行の飛行機を乗っ取って、南の海を目指す。
老人達はありがちなメンバー。ちょっとボケがきている、というより若いころから天然だったんじゃないか、という爺さんや婆さん。女優として活躍した若いころが忘れられない婆さん。堅物の爺さんとその妻。堅物の爺さんはハイジャックを知ると「馬鹿なことはやめろ」とティートゲンに食ってかかる。何か言いたそうな妻には「お前は黙ってろ。」
乗っ取りを企てたのはティートゲン。ダンディな爺さんだが、今の生活には絶望していて、偶然手に入れた銃で、自殺を考えたりもする。思いとどまった翌日、その銃でハイジャックを実行。
ハイジャックに最初に賛同するのはアンネグレト。美しい、加賀まり子風の婆さんだが、家族に捨てられるように昨日この老人ホームに来たばかり。
みんなの面倒を見ているのは、若い看護婦。ちょっと太めだけど、若さで輝いていて、爺さんたちも、老人ホームを見回りにくる警官も、飛行機の若いパイロットも、みんなを魅了する。
パイロットは爺さんと若造の二人組み。ハイジャックには驚いたものの、皆と仲良くなってからは、南の島行きに協力する。タイトルのご機嫌なセリフを口にするのは若いパイロット。
ティートゲンは、まずパイロット達を銃で脅して話をつけてから、客室に戻ってみんなに説明。手にした銃を見せつつ、「みなさん、これはハイジャックです。」驚く老人達。が、分かってない婆さんも一人。「あら、そうなの?で、犯人は誰なの?」
進路を変えた飛行機は、アルプスを越えて地中海の島へ。途中、小さな飛行場に降りて、「中東のテロリストにハイジャックされた」と言って燃料と食事の補給を要求。ハイジャック犯を演じるのは、若い頃女優だった婆さん。でも、中東のテロリストを演じるために、全身白いシーツをまとい、顔もサングラスで隠す。「これじゃ私が誰だか分からない!」
ひと気のあまりない、地中海の小島に着いた彼らは、地元の農家に泊めてもらい、みんなで食卓を囲む。楽しそうに皆と食事の準備をする妻を、堅物の爺さんが怒鳴りつける。「なに馴染んでるんだ!」でも、もう妻は夫を相手にしない。
海岸に向かうみんな。波打ち際に下りて、少女のように水と戯れる婆さんも。そして海を眺めるティートゲン。
現実を考えると、この後どうなるのか心配でしょうがないのだけど、そんな心配は堅物の爺さんに任せておいて、とりあえず美しい世界に逃避するのが吉だと思います。
......関係ないけど、「エレベーターを降りて左」ってよかったなぁ。エマニュエル・ベアールの、実に鼻の下がよく伸びる映画だった。もう一度みたいなぁ。
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