Endhiran ロボットテーマの満漢全席 ― 2011年05月15日
JALの機内で見た。 現地語音声、英語字幕、日本語なし。
これは想像を超えて凄かった。ギズモードの記事で、CGの奇怪さが並外れているのは知ってたんだけど、ストーリーも予想よりずっと盛りだくさんだった。詰め込み過ぎと言っていい。
ちょっと見、
ターミネーター+マトリックス(エージェント・スミス)
なのはすぐ気がつくと思うけど、全編通して見たら、
ロボコップ、 アイアンマン、 アシモフのロボット三原則、 鉄腕アトム、 フランケンシュタイン、 人造人間キカイダー、 新造人間キャシャーン、 トランスフォーマー
なんかを思い出してしまったのだった。そうです私は昭和40年台に小学生してました。
それでいてインド映画に欠かせない、主役の歌と踊りのシーンもたくさん。とてもたった2時間の映画とは思えない。歌と踊りの間はストーリー全然進んでないのに…
以下ストーリーをそのまま書くので、読みたくない人はご注意。
ロボット工学者ヴァシーは美人の恋人サナをほったらかしにしてロボットの開発に取り組む日々。最初のうちは、満足に歩くこともできないロボットだったが、順調に開発が進み、ついに踊りもカンフーも難なくこなせるように。ひとしきり歌い踊った後に、ついに学会発表にこぎつけ、ヴァシーは出席者の絶賛を浴びる。
が、ヴァシーの恩師でロボット工学界の重鎮ボーラ教授は、ヴァシーの成功をひそかに苦々しく思っていた。彼もまたロボットの開発を進めていたが、その進展はヴァシーのロボットにははるかに及ばなかった。
この辺、ライバル科学者が作ったロボットがまともに動かない、ってのはとてもよく見る、大好きなシーン。アイアンマン2で北朝鮮やハマー社がしくじってた映像は最近だけど、古いところではロボコップ2でも本家ロボコップの後に作ったロボコップはことごとく失敗ってシーンがあった。もっとさかのぼると、マジンガーZのボスボロットとか。
記憶をたどると、どうやら初めて映画館でみた映画、「サンダーバード6」でブレインズがサンダーバード6号のプロトタイプを作ってはジェフ・トレーシーにダメだしされるシーンが根っこにあるらしい。
開発が成功してご機嫌のヴァシーは、サナと一緒に、ロボットも連れて実家へ。両親はロボットを見て驚くが、きちんとインド式のお辞儀もでき、料理も家事も完璧にこなす様子を見て感心し、ヴァシーの母の提案でロボットは「チッティ」という名前になる。
ヴァシーはロボットを軍に採用してもらうべく、軍の評価会議でチッティをプレゼンする。が、評価委員の一人として出席していたボーラ教授は、巧みな実演により、ヴァシーには兵器として決定的な欠陥があることを指摘する。命令されれば、生みの親のヴァシーでさえ殺そうとするチッティ。これではいつ味方を攻撃しはじめるか分からない。これでヴァシーは軍からの注文を受け損なう。
この評価会議では、評価委員の一人が、「チッティはアシモフのロボット三原則に従うのか」と尋ねます。ヴァシーは平然と「いや、チッティはそれとは違う原則で動いています」と否定。さて、私はあの三原則が他の映画で言及されたのを見たことがありません。「アイ・ロボット」とか見てないから知らないのだけど、どうだったのだろう。
ヴァシーはめげずにチッティの改良を企て、人間の行動原理に関する知識を教え込みます。で、「どうだ、何か変わったか、どうなんだ、何とか言え、何も変わらないだと、何て役立たずなんだ、お前なんか消えてなくなれ」と突然の 天馬博士 。「そんな役立たずなロボットを作ったのはお前じゃないか、お前こそ役立たずだ」と至極真っ当な反論をするチッティ。更に怒るヴァシーをサナが止めます。「見て、チッティは怒っているのよ。感情が芽生えたんだわ。」
いや、本物の天馬博士は、アトムに「役立たず」と言ったのではなくて、アトムがいつまで経っても成長しないことに腹を立てたのですが、そう作ったのはあんたじゃねーの、って所は同じだね。
ロボットの感情・自我の芽生え、ってのも大事なテーマ。アシモフの「バイセンテニアルマン」(その映画化「アンドリューNDR114」は見てないけど) もそうなら、Star Trek: The Next Generation のデータ少佐の「娘」ラルの話も忘れがたい。フランケンシュタインも源流かなぁ。
で、感情を持ったチッティは、サナに恋をする。
いや、話をそう持っていきたくなるのは分かるけど、ベタ直球勝負だなぁ。
しかし、サナは平然とこう言い放ちます。 「ロボットと人間の間には越えられない壁があるの」。
カースト制の跡がまだ消えていないインドで、この展開はどう受け止められたのでしょうね…
そんな理屈で納得できるわけもなく、ヴァシーとサナの結婚式に乗り込んでサナをさらおうとするチッティ(この辺どうなったのか、あまり覚えてない…)。結局「卒業」のような展開にはならず、嫌気が差したヴァシーはチッティを鉈で切り刻み、ゴミ捨て場に捨ててしまう。
とても主人公とは思えない所業。
それをなぜか察知したボーラ教授は、ゴミ捨て場からばらばらになったチッティをかき集め、車でラボに持ち帰る。車の中で教授に 「助けて…」 と嘆願するチッティ。
涙を誘います。
ボーラ教授はチッティを再生しますが、同時に「破壊プログラム」の入った赤いチップを埋め込みます。
"Rise, Lord Chitti" 悪のチッティの誕生。 あるいは、服従回路イエッサー。
あっさりボーラ教授を始末したチッティは自分のコピーを作り、更にコピーにも同じことをさせ、一枚が二枚、二枚が四枚、四枚が八枚… 自分のコピーの軍団を作り上げます。
キャシャーンのブライキングボスですな。「ヤルッツェブラッキン!」
ヴァシーはチッティとそっくりに変装して(もともとチッティはヴァシーに似せて作ってある) ラボに潜入してチッティのコピーの大半の停止に成功します。が、残る数十台がフォーメーションを組んで球体や巨大ロボットに変形し、制圧に来た警察を蹴散らしながらヴァシーとサナの乗る車を追いかける。
ここ、トランスフォーマー少し入ってる?
…いろいろあって、赤いチップの摘出に成功するヴァシー。良心を取り戻すチッティ。町に大被害を与えたとしてヴァシーは裁判に掛けられるが、チッティが持っていたビデオ録画がボーラ教授の所業を暴き、ヴァシーは無罪に。しかし、判決は、危険なロボットを処分することも求めていた。
実験室で、ヴァシーはチッティに自らを解体せよと命令する。チッティは進んでその命令に従い、停止するのであった。
ここはターミネーター2のラストで自ら溶鉱炉に入り溶けていくT-800がダブります。
また、歩くこともできない状態から始まって、万能ロボットとなり、感情を獲得し、軍を相手に大暴れした後、運命を受け入れて静かに消えていく、という流れからは、アルジャーノンに花束を、を思い出したりもします。
これの主人公ヴァシー=チッティが、90年代にヒットした踊るマハラジャのラジニカーントその人だというのがまた驚き。まぁ、最近ハリウッドも爺さん往年のヒーローが主役の映画が多いので、同じようなものか…
近々 JAL 国際線ヨーロッパ路線に乗る予定がある人は、ぜひ。
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