ジャンゴ 繋がれざる者2013年01月27日

タランティーノの最新作は西部劇。時は1858年、南北戦争、そして奴隷解放のちょっと前。ジャンゴ=主人公は黒人で、賞金稼ぎのドイツ人に助けられて彼のパートナーになる。二人とも銃は凄腕。さんざん賞金を稼いだ後、二人はミシシッピの大農園に乗り込む。ジャンゴの妻を取り戻しに。


 Django Unchained (邦題:ジャンゴ 繋がれざる者)


前半は笑いどころたっぷりです。後半、妻を取り戻しに行くところから、辛いシーンが多くなります。


賞金稼ぎのドイツ人キング=クリストフ・ヴァルツが、期待通り良いです。イングローリアス・バスターズのナチ将校とは一転して、主人公を助け導く役ですが、その割にあんまりキャラが変わってない気がする。共通するのは、人の意表を突く喋りで相手を戸惑わせるあたりかな。彼の登場第一声から館内爆笑。


ヴァルツはこの映画でも各国語を喋ります。英独仏。で、やっぱり人に盗聴されないように外国語で話すシーンがあります。英語の字幕が出てたけど、作中の理由により、ゆっくり喋ってたので、僕でも聞き取れた。


ジャンゴの妻がいる農園主キャンディーはレオナルド・ディカプリオ。クイック・アンド・デッドでヒヨッコを演じていた彼も、立派な年寄りの悪党になりました。キャンディーの奴隷に対する扱いは、見ていて辛くなるぐらい酷いのだけど、にも関わらず、彼は当時の法に触れることはまったくしてない。最後までそう。というのが気持ちが暗くなる。「所有物(奴隷)をどう扱おうとも全く私の勝手だ」というのが法律だった時代。


キャンディーの館の奴隷頭はサミュエル・L・ジャクソン。この奴隷頭は、キャンディーに忠実で、奴隷やジャンゴに一片の同情もない悪役。


タランティーノも例によってちょっと出演。


この先ネタバレ。あまり、謎がある映画じゃないので、ネタバレっていっても単にストーリーに触れるだけですが、一応。









キングの馬車の屋根の上には、スイカ大の歯の模型が提灯アンコウの触覚のようにぶらぶらしていて、とても目を引きます。と思ってたら、後でこの提灯がちゃんと活躍して、なんだか嬉しい。


クー・クラックス・クラン(KKK)もどきのやつらが出てくるのだけど、徹底的に間抜けに描かれていて、ここでも大笑い。南部の農園で賞金首をジャンゴがおおっぴらに仕留めて間もなく、荒野でキャンプするキングとジャンゴの馬車を、KKKが取り巻きます。ここで前触れなく時間が前後して、過去のシーンが出てきます。誰かの回想シーンてわけでもないので、ちょっと戸惑う。農場主が手下を集めて、これからジャンゴたちを襲撃に行こうというシーンなのだけど、KKKのシンボルである、目の所だけ穴をあけた、白い覆面がおちょくりの材料になってます。


後半、辛いのだけど、印象に強く残るシーンがたくさんあります。


キングの策略に気づき、ディナーの席に、かつての反乱奴隷の頭蓋骨を持ち込んで骨相学を語り始めるキャンディー。その流れでジャンゴの妻の頭を押さえつけてハンマーを振り上げ、「お前の返答次第では今すぐこの頭を砕いて、この頭にも3つのくぼみがあるかどうかを確かめてもいいんだぞ。」屈服するキング。


(三銃士の作者)「アレクサンドル・デュマは黒人だ」ってセリフがあります。Wikipediaによると本当にそうで、デュマのがクレオールで、デュマも人種差別を受けたと。そうだったのかぁ。


キングに別れの握手を強要するキャンディー。「どうしてもというなら」と手を前に出すキング。


キング「すまない、我慢できなかった」この映画でも一番すっきりする瞬間だと思う。


でも、タランティーノの映画で今更どんどん人が死ぬのには驚かないけど、なんかスッキリしない。


いろいろ考え合わせると、ジャンゴが撃った中で悪人じゃないだろう、って奴はいないかもしれない。でも、映画を見てる間はそう判断しきれなくて、ジャンゴが罪のない人を撃ちまくっているように感じるのですよ。それに、キャンディの妹はどうか?鉱山にジャンゴを輸送してた3人はどうか?ジャンゴが遠くから狙撃した殺人犯だって、その罪はキングが説明するだけで、映画の中では描かれないので、打たれた直後にまだ少年らしき息子が駆け寄るのをみると、スッキリしないのですよ。周りの観客は笑ってたりするんだけど。


良心回路ジェミニを組み込まれた某変身ヒーローは、悪の手先となった元の仲間と戦うことができない、昔の漫画の、そんな設定を思い出したり。そういう風に感じてしまう人は、服従回路イエッサーも組み込んでから見に行く方が良いです。


[2013年1月27日追記: キングとランダが似ている件について]


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